My bookshelf 「星の音が聴こえますか」

星の音が聴こえますか

星の音が聴こえますか

小学校4年生から徐々に聴力を無くしていった松森果林さん。どんなに怖かっただろう。
聴こえる「ふり」をしながらの生活。17歳で完全に聴力を失う。

星がきらきら、ぴかぴか輝いている音が聴こえる、と言う彼女。
あんなにたくさんの星が空にひしめきあっているのに、音が聴こえない方がおかしいと。

彼女の綴る文章は、「ああ、聴こえない世界はこういうことなのだ」というちょっと想像力を働かせれば分かるはずの出来事で溢れている。自宅に居て、急に身体の不調を感じても、電話をかけることができない。119は分かっていても、伝えることができない。

涙が止まらない。けれど、どこからこの涙が溢れてくるのかが分からなかった。
「かわいそう」という感情ではない。「知らなくてごめん」という感情だけでもない。
もっと言葉にも形にも、できないものが泣いていたから。悲しいという感情だけで人間は泣くわけではない。

文面から、彼女が毎日を本当に大切にしていることが分かる。人とのつながり、出会いを。
魅力的な女性だから、もっと彼女を、そして彼女の生きている世界を知りたい・・・きっと果林さんの周りにいる人たちはそんな想いでいるのだと思う。

心で聴く。
伝える、伝わる、伝え合う。
「音声」としての言葉だけが存在しているわけではない。

分かり合える喜び。耳だけでない部分で「聴く」ということ。

生きていることは素晴らしい。みんなに心からありがとう。